鋸山登山/どんな歴史があるの?最も歴史を感じるコースは?

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千葉県、内房の浜金谷に位置し、神奈川県横須賀市と東京湾を挟んだ向かい側『鋸山』。東京から電車や車で日帰りでアクセスできる他、横須賀市久里浜から直通フェリーが出ているため、神奈川からもアクセスが良い観光地です。標高300mで登山初心者にも挑戦しやすく、名前だけは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?

実は鋸山、ただ自然を感じられる山という面だけでなく、約1300年前にお寺が建立され江戸時代には採石が行われていたという歴史を感じる面も持ち合わせているのです。また、直接頂上まで行くことのできるロープウェーがあったり、登山道も初心者向けの関東ふれあいの道や歴史を感じることのできる車力道があったりと、鋸山をめぐるルートは様々です。

そこで今回は、鋸山がどのような歴史を歩んで今の姿になったのか、また、せっかく歴史の長い山だからこそ最も歴史を肌で感じられるおすすめルート、そして最後には鋸山登山の際の持ち物を紹介してきますね!

歴史好きな方はもちろん、行く前に歴史について知っておきたいという方もぜひ参考にしてください。

鋸山の歴史

鋸山の歴史は約1300年前の奈良時代まで遡ります。聖武天皇と光明皇后に遣わされた行基菩薩によって、日本寺が鋸山に建立されました。「日本」という国名の由来となった「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す」という手紙を中国に出した聖徳太子。その聖徳太子が約1500年前の人物と言われているため、鋸山の始まりは日本の始まりとかなり近いということが分かりますね。信じられない程歴史のある山です…!

境内は約10万坪、東京ディズニーランドの2/3もの広さに上ります。日本最大の石製大仏座像『薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)』の他に、敷地内には『東海千五百羅漢』と呼ばれる数え切れないほどの石仏があります。山肌に彫られたいくつもの洞窟の中に多数の石仏が佇む姿は圧巻です。日本寺の敷地内の多数の見所は、約1300年前から始まる日本寺の歴史の中で少しずつ形作られていったのです。

そんな歴史ある日本寺を有する鋸山に、江戸時代以降は採石場としての一面も加わります。鋸山から採石された『房州石』は軟らかいため加工がしやすく、耐火性にも優れていたため、主に建築用に利用されていました。明治時代に日本が近代化する際には、インフラの基盤として活躍した他、開国の始まりの地・横浜港の護岸用石材としても用いられました。

房州石の切り出しは、長年に渡り人の手で行われてきました。つるはし風の道具で山肌に溝を掘ることで切り出したい形を描いた後、楔を打ち込むことで石を割ります。1960年頃に機械が取り入れられるまではこの方法が取られてきました。約80kgの直方体に切り出された石は、2~3個まとめて荷車に積んだり、ツタで縛り斜面を滑らせたりすることで、山の麓まで下ろされ、出荷されていきました。

また、最も驚くべきは、切り出された石を山の麓まで運ぶ役目を女性が担っていたということです。『車力』と呼ばれる女性達は、1個あたり80kgにもなる石を2~3個荷車に積んだ、計240kgの荷車を運んでいたのです。しかも山の上から麓へ降りる下り坂。道を転げ落ちそうな荷車の重心を自分の身体にかけることでバランスを取りながら、一歩一歩下っていました。想像を絶する程の過酷な重労働で、作業中に亡くなる方も多かったそうです.. ちなみに男性は山頂で石を入りだす作業を担っていました。

鋸山での採石作業は、1980年代中頃まで行われていました。何百年も前に始まった鋸山の採石場としての役割は、つい30年程前まで続いていたんですね。その頃には建築用にコンクリートが広く普及していたため、採石場としての役割に幕を閉じることとなったのです。

日本の始まりとかなり近い時期に建立された日本寺、何百年もの間日本の建築を支えてきた採石場、鋸山には二つの顔があり、それぞれに長い歴史があります。そしてその中には数え切れないほど多くの人が関わって来ました。鋸山に関わってきた多くの人と、その悠久の時間に想いを馳せながら、鋸山を楽しんでくださいね。

おすすめコース・車力道

長い歴史を持つ鋸山。そんな鋸山で歴史を感じられるおすすめコースは、その名も『車力道』。車力と言えば、切り出した石を麓まで運ぶ仕事をしていた女性達のことでしたね。そうなんです、車力道はまさに車力達が計240kgにも及ぶ荷車を押しながら山を下っていた道なんです。そんな車力道を麓から登り、日本寺に至るルートの中から、いくつか見どころをピックアップしましたので、見ていきましょう。

  • 車力道に残された、車力の痕跡

車力道は、石が敷き詰められた石畳のような道から始まります。この石畳、道の脇がずっと窪んでいるのです。これは重い荷車一台、一台が長年かけて通ったことで石がえぐれてできた溝なんです。荷車がどれほど重かったのか、どれほどの長い間この道が使われていたのかを実感することができます。道の脇には、置き去られた直方体の石が散在しています。これは切り出されていた石の実物になります。既に苔むしたその石は、本当に車力達が鋸山で働いていたということを感じさせてくれます。

  • 急すぎる階段

鋸山展望台を目指して歩いていると、疲れた頃に出てくる急すぎる階段。もはやほぼ直角なのではないかと思わせる程です。山肌にしがみついて登るかのような階段で、アドベンチャー要素を感じることができます。ここまで急な階段はなかなかお目にかかることがありませんので、ぜひトライしてください。登る際には、両脇に手摺りがありますので、しっかりつかまって、滑らないように気をつけてくださいね。

  • ぐるっと海が見渡せる展望台

急すぎる階段を登り切って少し歩くと、展望台にたどり着きます。ぐるっと辺りの海や街を見渡すことができ、そこまでの疲れの吹き飛ぶ景色です。千葉の山と街、海が見渡せる他、天気の良い日には海を挟んだ向かい側となる横浜市まで見ることができます。天気予報をチェックして、天気の良い日に訪れてくださいね。

  • ラピュタの世界な石切り場

何百年に渡って採石が行われてきた鋸山は、その山肌が上から下まですっかり切り取られている箇所が多々あります。また、当時使用されていた機具が既に錆び、そのまま置かれていることもあります。削られた巨大な空間と、錆びた機具には少しずつ苔が生えてきており、時の流れと少しの寂しさを感じさせます。忘れられた巨大空間。錆びた機械。まさに「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせる世界です。その巨大空間ではコンサートが開かれることもあるようなので、予定を合わせて行ってみたいですね。

  • 日本寺

既に紹介をした通り、約1300年の歴史を持つ日本寺。車力道を登り、一通り石切り場を満喫したら、日本寺にも足を運んでみてください。拝観料は、大人700円、小人(4〜12歳)400円となり、30人以上で団体料金もあります。約10万坪にも及ぶ境内には見所がたくさんありますので、一見の価値ありです。それでは、日本寺境内のみどころも見ていきましょう。

  • 百尺観音

その名の通り、高さ約100尺(約30m)の巨大な観音像です。太平洋戦争の戦没者、交通戦争の犠牲者供養のために彫られました。岩壁に直接彫り込まれた、磨崖仏という種類の観音像になります。約1300年の歴史を持つ日本寺の中では、戦後に掘られた百尺観音はかなり新しいスポットですね。

  • 地獄覗き

鋸山に行ったら外せないスポット・地獄覗き。山から張り出した岩場から、眼下を覗き込むことができます。しっかりとした柵で囲われているため安全であるものの、高所恐怖症の方には恐ろしいスポットです。日常的に長蛇の列ができる程の人気スポットのため、拝観時間開始と共に、まず地獄覗きを訪れることをお勧めします。

  • 東海千五百羅漢

日本寺境内に散在する大量の石仏。東海千五百羅漢と呼ばれ、合計1553体に及びます。江戸時代に、約20年かかり制作されたものになります。山肌に彫られた洞窟の中に佇む石仏の姿はとても神秘的。それぞれが個性を持った石仏のため、境内のハイキングを楽しみつつ、石仏も楽しんでくださいね。

おすすめの持ち物

さて、実際に鋸山を訪れる際には、何を持って行ったら良いのでしょうか?実際に訪れた筆者の感じた必要な持ち物を、箇条書きで記載致しますね。鋸山観光の際の参考としてください。

  • 上着 – 動いていると暑くなると思うかもしれませんが、山は一般的に、その他のエリアより涼しくなるものです。汗が冷えて風邪をひかないように、上着を持って行ってくださいね。
  • 飲み物 – 車力道・石切場・日本寺と見所をめぐっていると、長時間歩き続けることになります。飲み物は必須ですので、必ず持参してください。
  • 軽食・甘いもの – 実は鋸山内には食べ物が買える場所がありません。長時間山中にいるとご飯が必要ですし、疲れた時のために甘いものも持って行きましょう。
  • 日焼け止め – 山中は木陰がたくさんあっても、やはり日に焼けます。ずっと屋外にいるのですから、日焼け止めも忘れないでくださいね。

まとめ

今回は、鋸山の持つ歴史と、その歴史を感じられるおすすめコース『車力道』について、そして訪問の際に必要な持ち物を紹介致しました。

奈良時代から続く伝統ある日本寺。江戸時代から活用され日本の近代化にも大きく貢献した採石場。そんな全く異なる2つの側面を併せ持つスポットは、とても珍しいのではないでしょうか。ただ登山を楽しむだけでなく、一度に様々な側面の歴史に触れることのできる部分も鋸山の大きな魅力です。

鋸山に訪れる前に、歴史について知るきっかけとして、またその歴史を存分に感じられるコースを選ぶきっかけとして、参考にしていただけたら嬉しいです。

今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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